読書の記録~『格差が遺伝する』
「料理好きなお母さんの子どもは成績がよい」
「お父さんの読書量と子どもの成績は比例する」
「成績『下』の子ほど親も子も肥満ぎみ」
「夫婦間の満足度と子どもの成績は比例する」
これって本当……?
風邪薬を飲んで、横になりながら読書しました。
爆発的にヒットした『下流社会』の著者 三浦 展の
『格差が遺伝する!~子どもの下流化を防ぐには』
宝島社新書、2007年を読んでみました。
本書の帯には次のような文章が…。
「すべての親と教育関係者が震撼する!衝撃の「格差再生産」最新レポート。」
「“頭のいい子”を育てる父親・母親とは?
父親や母親の生活時間が不規則になってくると、家族一緒に夕飯を食べることも、一緒に会話を楽しむことも難しくなる(中略)
子どもの成績の格差を生み出しているのは、実は『収入の格差』だけではなく『生活の格差』なのだ。」
相変わらず、マーケッティングが専門なだけに、客を引きつけるフレーズをつくるのは上手ですね。
目次もパッと見ると、すごく面白うそうなんです。
ちょっと長いですけど、細かく書いておきますね。
はじめに
第1章 子どもの成績は親の経済力に比例する
父親の所得が高いと子どもの成績はよい
貯蓄と子どもの成績も比例する
父親の所得が高いほど塾に通い、中学受験する子どもが多い …ほか
第2章 母親が子どもの成績を左右する
母親の学歴や結婚前の所得が高いと子どもの成績がよい
高学歴、高所得だった女性ほど、お受験ママになりやすい?
母親の子ども時代の成績がよいと子どもの成績もよい
母親の子ども時代の成績が悪くても子どもの成績は向上する
母親が勉強嫌いだった場合でも、子どもの成績が悪いとは限らない …ほか
第3章 食生活が成績の上下を分ける
成績がよい子どもほど、食生活も健全
成績の悪い子どもほどコンビニに依存
成績のよい子どもの母親の方が料理好き
食べることが面倒くさい母親
成績のよい子の母親は、自分も朝食を食べる …ほか
第4章 頭のよい子はどんな子か?
子どもで気になること
成績が悪い子どものほうが、運動が苦手でゲーム好き
生活習慣の改善が重要
新しいエリートの登場?
産業界の教育界に対する期待 …ほか
第5章 「生活の質」の格差が階層の固定化を生む
成績のよい子は親子の会話が多い
個室があるかどうかと成績は無関係
親子の会話と「生活の質」
父親が土日休みのほうが子どもの成績はよい
子どもとの会話を増やせない状況 …ほか
第6章 子どもを中学受験させる親、させない親
受験するかしないかは経済格差がある
母親の学歴が高いほど、子どもに中学受験させる
正社員で働くお受験ママは23区内に多い
祖父の学歴も関係ある
母親は娘に自分よりいい成績を求める …ほか
第7章 母親たちの満足と不安
子どもへの満足度は成績に比例するのか?
子どもの成績評価は母親の業績評価
多元的な価値観を忘れないでいたい
母親が満足する子どもは「がんばりや」「まじめ」「正直」
満足される子どもは社会人としてもやっていけそうなタイプ …ほか
参考 母親の4タイプと子どもの成績
母親の4タイプ
しっかりした性格で、成績もよいしずかちゃん
自立心がなく、面倒くさがりなのび太
しずかちゃんママは、子どもへの満足度が高い
保守的なスネ夫ママ、まじめにコツコツ働くことを望むのび太ママ
おわりに
ゆとり教育に対する評価は低い
親は実用的な教育を求めている
文化格差への対応 …ほか
あとがき
以前、『下流社会』を読んだ時の感想。
「視点は面白いのだけど、データ処理がいい加減で少しがっかりさせられた」。
そんな事も忘れて、今回もまたまた書名に騙されたかなという感じです。
第一印象で「おもしろそう」と思ったので、さっと一気に読むことができたのですが、全作と同じように、読み終えての感想は前作と全く同じもの。
まあ、彼自信が自分の肩書きとして「消費社会研究家・マーケティングアナリスト」と言っているように、社会学的な分析はほとんどできていません。
結局のところ、この本はマーケティングの本なんですね。
「子供が勉強ができる/できない」の根拠が親に聞いたアンケート結果。
質問仕方にも問題があると思うんだけど、どんな親も自分の子どもが出来が悪い子とは、基本的には答えないでしょう。
だから、そんなバイアスのかかった親の返答で「親が勉強ができてたら子供もできる」「裕福な家の子供の方が成績が良い」という結論は簡単には導き出せないはず。
親の見た目からのものではなく、もっと客観的なデータが欲しかったです。
そして、親の成績についても、実際のデータではなく、自己申告。
これでは、相関について検証するは難しいですね。
要するに、彼は、「格差社会の中で『経済資本の格差』が結果的に『文化資本の格差』へとつながっていく危険性を持っている。そうした『文化資本格差』が最終的には、子どもの学力問題へとつながっていく」という事を言いたかった訳です。
この視点は、面白いし、実体験として格差社会を生きている親たちからすると、ある程度の感覚的リアリティは感じるでしょう。
しかし、それを客観的データで示してくれなくては…。
データの検証には、不満が残りましたが、1つだけ著者が提案する『文化体験・本物体験・職業体験・大人と子どもの交流の重要性』には、舌足らずな部分もありますが、かなり共感できるところがありました。
だれか、同じような視点で、「社会学的に」「客観的データ分析」をもとにして、検証してくれないかな~。
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