読書「僕は君たちに武器を配りたい」
昨年から書店で平積みされていて少し気になっていた本。
でも、題名が???って感じだったので、手にも取らずにいましたが…。
厚みのある本ですが、結構、スラスラ楽しく読めました。
私何かのような40過ぎのおっちゃんより(ためにならないという訳ではなく、よりためになるという意味で)高校生~大学生あたりに読んで貰いたい本です。
「僕は君たちに武器を配りたい」瀧本 哲史、講談社
20代が生き残るための思考法
著者は、東大、マッキンゼーを経て、現在、京大で絶大な人気をほこる方。
新しい経済の流れで、自分の力で道を切り開き、ゲリラ的に生き残るための「武器」について、“投資家としての経験から”語ります。
端的に言うと、昨今の厳しいご時世、“冷酷な資本主義”の中でいかに活きていくのかという処世術~いかに「コモディティ化」を避けるかということ~について述べられています。
では、まずは「コモディティ化」とは何かから。
「コモディティ化」とは、"ある商品が個性を失ってしまい、消費者にとってみればどのメーカーのどの商品を買っても大差がない状態になること“を指します。
冷酷な資本主義においては、“個性のないものはすべてコモディティであり、コモディティ化するのは商品だけではなく人材もコモディティ化していきます。”
それでは、「コモディティ化」を避けるためにはどうしたらよいのでしょうか?
簡単に考えると、何にでも取って代わられるような「コモディティ」ではない「スペシャリティ」になる必要があると考えがちです。他に代替するものがない唯一のモノ・人になっちゃえば良いのではということです。
それは、誰でも思うことであり、実際に私たちの多くが、この「スペシャリティ」を手に入れるために、人より勉強し良い大学に行ってより深い知識を身につけるとか、他人にないスキルや資格を身につけるなどしてきました。
しかし、昨今の過酷な資本主義の世界の中で、著者は、いくら英語が堪能であっても、苦労して医者や弁護士という資格を得たとしても、“コモディティ化は避けられない”と言います。
それが、“非情で残酷な”資本主義社会の現実なのです。
では、筆者は「コモディティ化しない方法」として、どのような事を提示しているのでしょうか?
著者は、非情にわかりやすく“稼ぐことができるタイプ”を6タイプに分類しています。
1.商品を遠くに運んで売る「トレーダー」
2.専門性を高めて仕事をする「エキスパート」
3.商品に付加価値をるけて売る「マーケター」
4.まったく新しい仕組みを作る「イノベーター」
5.みんなをマネージて利益を得る「リーダー」
6.投資家として市場に参加する「インベスター」
この中で、今後生き残っていくのが特に難しいのは、1と2の「トレーダー」と「エキスパート」。
両者とも、これまではそれでも良かったが、今後、コモディティ化して価値を失っていくタイプだと言います。
では、残りの4つのタイプの中で、最も推奨されるタイプはというと…。
それは、著者自身が実践してきた投資家として市場に参加する「インベスター」。
私も、かつて将来、研究者を目指し大学院に在籍しているときには、バイトで食いつないでいる多くのオーバードクターの先輩方を見てきましたから、このままここで研鑽を積んだとして本当に将来食っていけるのだろうか?不安になることが多々ありました。
実際、大学院を卒業しても色にありつくことができない、いわゆる“高学歴ワーキングプア”は、日本にゴロゴロしています。
かつて、そんな不安を大きく抱えているときに、ぜひ読んでみたかったな~とつくづく思いました。
人生、違う展開が待っていたかもと思いました。
また、著者は、締めくくりに「リベラル・アーツ」を学ぶことの重要性を強調しています。
例えば、「英語・IT・会計」は人に使われるための、「奴隷の学問」であり、それを身につけたとしても、「コモディティ化」は避けられないといいます。
それに対して、「リベラル・アーツ」は人類の歴史や、哲学、芸術、文化、自然科学全体について勉強する学問です。
著者は、”幅広い分野の学問領域を横断的に学ぶことによって、「物事をさまざまな角度から批判的に考える能力」「問題を発見し解決する能力」「多様な人々とコミュニケーションする能力」「深い人格と優れた身体能力」などの力を身につけることができる”と指摘します。
このリベラル・アーツで学ぶ基礎的な素養が、投資家として生きていく上でも、資本主義の仕組みを理解して物事を判断していくうえでも、非常にに重要であるという訳です。
まさに、そうだ!と読み進めるうちに納得の連続でした。
ぜひ、若者たち(私も若いのですが…)に本書を通して色々と考えを深めていって欲しい。
「評価 ★★★★★ ★★★★☆ 90点」
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