映画「5デイズ」(洋画)

no-bu

2012年02月26日 19:56

なんか最近の映画って洋画の作品名の日本語訳がいい加減ですよね。

「3days」「4days」「5days」

どれも日数に関係することなんだろうと思いますが…。余りにも安易すぎませんかね?

どうせなら、これからもずっと、「6days」「7days」…と続ければ良いと思います。
その筋の方、どうぞご検討を。

さて、今回は、その中の「5DAYS」を鑑賞


































この作品は、2008年に世界中の人々が北京五輪に注目しているその裏側で、あまり注目されなかった“ロシアとグルジアとの戦争の真実を描いた戦争ドラマ”らしいです。

監督は「ダイ・ハード2」のレニー・ハーリン監督なので、結構な激しい戦闘シーンも期待されました。

5 DAYS OF WAR「5デイズ」
監督:レニー・ハーリン
出演:ルパート・フレンド、エマニュエル・シュリーキー、リチャード・コイル、ヘザー・グレアム、アンディ・ガルシア、ヴァル・キルマー



さて、今回の作品の舞台となるグルジアって国、どこにあるかご存じでしょうか?
暇な方は、探してみてください。
グルジアは、黒海に面しており、北にロシア、南にトルコと中央アジアに位置している国です。






















もともと、グルジアは19世紀初頭に南下してきたロシア帝国によって強行的に東部が制圧され、その後、1878年にグルジア全土がロシア帝国領となりました。
ロシアは、この地域に住む諸民族に対して徹底的な植民地政策をとって、強烈にロシア化を強要したため、グルジア人の反ロシア感情は非常に強いものがあります。

その後、各地で反ロシア運動が展開され、1918年に一旦はグルジア共和国独立宣言を行ないますが、1922年、このグルジア共和国はスターリンによって打倒され、アルメニア・アゼルバイジャンとともにザカフカース・ソビエト連邦社会主義共和国としてソ連に加入させられました。(1936年、ザカフカースはグルジア、アルメニア、アゼルバイジャンの3国に分割)。
その後、幾度となく、この三国は完全独立を目指し、連邦中央と対立を繰り返してきました。

1991年、ソ連邦崩壊の流れの中で、グルジアは、グルジア共和国として独立しますが、政治なかなか安定せず、大統領派と反大統領派が内戦を繰り広げました。
さらには、旧ソ連加盟国との結びつきを政治的・経済的に断ったため生産力が低下したため、経済的に行き詰まったグルジアから独立しようと、南オセチアやアブハジアの民族運動が激しくなりました。

こうした独立運動の背景には、以前からのグルジア共和国のグルジア民族主義や民族独立を主張するオセット人に対する武力弾圧(これは、それ以前のソ連の南下にオセット人が協力的だったと考えたことも影響してか…)などに対するオセット人の反発の高まりという要素も強く影響しています。

さて、こうしたグルジアと南オセチアの対立にロシアが介入してきたため、状況はさらに悪化します。
ロシアにとってグルジアはカスピ海産の原油を運ぶパイプラインの存在など、中央アジアの原油を確保する上で密接な関わりがあります。さらにロシアから見るとグルジアは、南の玄関口である黒海へ連なる要衝に位置する重要な国家と位置づけられています。
そうした観点からもロシアは、まずはオセチアを取り込んでおくことが、今後のグルジアとの関係性から見ても重要であったためだと思います。




さて、こうした複雑な政治的・歴史的な関連の中で起こった戦争の真実に切り込むと銘打っていますが、戦闘シーンの撮影にグルジア軍の全面的な裾力を得ている部分などからも見て分かるように、戦争を描く視点が偏っていると強く感じました。

以前にも、「記憶/物語」の記事で見たように、どのような視点で記憶が語られているのかということをしっかり見極めておくというのはかなり重要です。

本作品でも“ロシア軍が雇った傭兵=悪いやつ”という一方的な視点を押し付けられている部分が非常に強かったと感じました。
その辺が非常に残念です。

「評価 ★★★★★ ☆☆☆☆☆ 50点」


(あらすじ)☆ネタばれ注意!
2007年、イラク。
アメリカ人フリー・ジャーナリストのトマス・アンダース(ルパート・フレンド)は、バグダッドの市街戦で恋人のミリアム(ヘザー・グラハム)を失い、心に大きな傷を負った。
それから1年。
再び戦場取材に戻る決意をしたアンダースは、グルジア共和国の首都トビリシに旅立つ。グルジアでは、南オセチア独立問題に端を発したロシアとの対立が激化しており、アンダースは、カメラマンで相棒のセバスチャン(リチャード・コイル)らと共に一触即発の紛争地帯に向かう。
2008年8月8日未明、グルジア側のオセチア攻撃を理由に、ロシアは軍事介入を開始。
グルジアのサアカシュヴィリ大統領(アンディ・ガルシア)は戒厳令を宣言し、ついに戦争が始まった。
ロシア軍の空爆に巻き込まれたアンダースは、爆弾が降り注ぐ修羅場でタティア(エマニュエル・シュリーキー)という美しいグルジア女性を助ける。
非武装地帯への空爆を告発しようとするアンダースだったが、世界の関心は開幕したばかりの北京オリンピックに集中し、この事態を伝えようとするネットワークは一局もなかった。
そんな中、アンダースとセバスチャンは、離れ離れになった家族を捜すというタティアと共に危険地帯の奥深く踏み込んでゆく。
そこで彼らは、市民の無差別虐殺を目撃、戦争犯罪の証拠となる映像を撮影するが、オセチア軍によって身柄を拘束されてしまう。
真実を世界に伝えるため、アンダースは決死の脱出を図るが……。

関連記事