読書「ジェノサイド」高野和明

no-bu

2012年03月05日 12:00

ようやく読み終えたーーーって感じ…。
すでに読まれてしまった方からすると、ようやくって???って思うはず。

だって、読まれた方は大方、作品に入り込み、寝る間も惜しんで最後まで読み終えるはだから…。
当然、私も同じように読み始めると、「次はどうなるのだろう?」とワクワクの連続で早く読み進めたい気持ちがいっぱいであったが、仕事が忙しくなるし、体調を崩した家族の看病などでパタパタして時間を取られ、結局、途切れ途切れで1週間以上も読み終えるまでにかかってしまった。

「ジェノサイド」高野和明、角川書店


で、一言でいうと、さすが2011年のミステリーランキングでは1位の作品。
大変面白い。読み終えた後は、何か素晴らしい映画を1本見終えた満足感以上のものがある。

創薬化学の研究室で有機合成をやっている大学院生の古賀研人は、父が駅で倒れて急死したため厚木の実家に帰省し、その葬儀を終えてようやく東京文理大学の園田研究室に復帰した。
久しぶりにパソコンを立ち上げてメールをチェックしていたところ、差出人「多摩理科大学 古賀誠二」というメールに気がついた。
死後5日以上も経過してから発信された、大学教授だった亡父からのメッセージだった。

「このメールが届いたということは、私が五日以上お前やお母さんの前から姿を消しているのだろう。だが心配はいらない」という書き出しだった。
「アイスキャンディで汚した本を開け。このことは誰にも言ってはならない」との内容だった。
研人が幼いときに汚した父の本…、二人にしか通じない内容で、妙に用心深く、不思議なメールだった。


とにかく面白いおすすめの作品だが、ちょっと注意しておきたいことがある。
色々と本作は賛否両論あるのも事実である。
というのは、作品中の表現に多々出現する作者の歴史観への批判である。

書き方的に、確かに、妙な正義感を、それも凄く高みから振りかざしているような部分が沢山あるので、それが鼻につく方も多いのであろう。

あくまでもフィクションなので、そのへんは良しとしても、ここまで人間の愚かさを詳述する意味がどこにあったのかという事も個人的には気になる。
確かに、主題は「ジェノサイド」であるので、歴史上、人間という生物がくり返してきた蛮行を描くことで伝えたい世界があったのだろうが…。

まあ、色々と気になる部分もあることにはあるのだが、“おもしろさ”という点では、最近読んだ本の中でも群を抜いていることは間違いない。

「評価 ★★★★★ ★★★★☆ 90点」

関連記事