映画「私を離さないで」(洋画)
生まれたときから自分の人生が決定づけられていたら…?
そして、その人生があまりにも過酷なものだったら…?
自分の生き方を決めるのは、自分でしかない。
至極あたりまえの事だが、そうでない世界に私達が産み落とされたなら、私達はそれをどう受け止めるのだろうか?
「わたしを離さないで」
監督:マーク・ロマネク 原作:カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』早川書房刊 出演:キャリー・マリガン、アンドリュー・ガーフィールド、キーラ・ナイトレイ、シャーロット・ランブリング
何とも切ない作品
前回、紹介の「メッセージ」同様、人の生と死について描いた作品。
見終わったあと、何とも言えない余韻がしばらく消えませんでした。
この作品は、イギリスの権威ある文学賞 『ブッカー賞』 の2005年の最終候補にも残った作品らしいです。
外界との交流が閉ざされた寄宿学校「ヘールシャム」で育った若者、キャシー、ルース、トミー。
この3人の隠された秘密…。
そして、彼らを待ち受ける残酷な運命…。
まずは、原作をという方もいらっしゃるでしょうが、予備知識なしで、徐々に事実を知って行った方が楽しく見れるでしょう。
最初から自分の運命、人生を決定づけられている彼ら。
生まれ出た時から、いずれは他人のために自らの命を差し出すことが決定づけられている彼ら。
そんな彼らには、自ら作るアイデンティティや愛し合うことなど必要ない。
なぜならそれは、いつか必ず奪われてしまうものだから。
自らのアイデンティティ形成の主体となり得ないことがどれだけ苦しいことか。
愛を永遠に分かち合う相手がいないということがどんなに悲しいことか。
しかし、ヘイルシャムの子供たちは、そんな未来を悲観して自殺したりしないし、逆に冷静なまでに自らの過酷な運命、人生を受け入れる。
それは仏教でいうところの『諦念』のような悟りの境地に近いものがある。
彼らはなぜにまでそこまで強いのか?
なぜにそこまで冷静でいられるのか?
その心の平静、強さの源は何か?
教えて欲しい。
「評価 ★★★★★ ★★★☆☆ 80点」
(あらすじ)☆ねたばれ注意!
緑豊かな自然に囲まれた寄宿学校ヘールシャム。
そこで学ぶキャシー(キャリー・マリガン)、ルース(キーラ・ナイトレイ)、トミー(アンドリュー・ガーフィールド)の3人は、幼い頃からずっと一緒に過ごしてきた。
しかし、外界と完全に隔絶したこの施設にはいくつもの謎があり、“保護官”と呼ばれる先生のもとで絵や詩の創作に励む子供たちには、帰るべき家がなかった。
18歳になって、校外の農場のコテージで共同生活を始める3人。
生まれて初めて社会の空気に触れる中、ルースとトミーは恋を育んでいく。
そんな2人の傍にいながらも、次第に孤立していくキャシー。
複雑に絡み合ったそれぞれの感情が、3人の関係を微妙に変えていく。
やがて、彼らはコテージを出て離れ離れになるが、それぞれが逃れようのない過酷な運命をまっとうしようとしていた。
やがて再会を果たしたルース、トミーとかけがえのない絆を取り戻したキャシーは、ささやかな夢を手繰り寄せるため、ヘールシャムの秘密を確かめようとする。
だが、彼らに残された時間はあまりにも短かった……。
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