読書「ナミヤ雑貨店の奇蹟」
さすが!とうなる一冊ですね。
これまでの東野作品とは、ちょっと志向が違いますが、いつもの東野作品の読了後には感じなかったような気持ちになれた作品です。
すごく温かな気持ちになれる作品ですね。読み始めると、かなり入りこんであっと言う間に読み終えることができました。好きな人は、2~3時間で一気に読み終えちゃうんじゃないでしょうか。
タイトルを担う「ナミヤ雑貨店」は、なんでもない郊外の寂れた住宅地に残されたシャッターが下りたままの古びた雑貨店。
その雑貨店を起点に過去、現在と悩みを抱えた人たちが絡まり、繋がり話が進んでいきます。
前半は短編の物語が独立しており、いつもの東野作品の感覚で読んでいくと、ちょっと“あれっ”と感じて、少し淡泊な感じで話が進んでいきます。
しかし、読み進みめていくと、登場人物すべてが、「ナミヤ雑貨店」と児童養護施設「丸光園」と上手く繋がっていきます。後半になればなるほど、それぞれの物語の流れが集まって、大きな河の流れのようになっていきます。
悩み相談の手紙をシャッターのポストに投函すると、牛乳箱に返事の手紙が入っているという不思議な店「ナミヤ雑貨店」。人生の岐路にたたされた迷える人間がナミヤ雑貨にやって来て、活路をいかに見出せばいいのか?といった内容の手紙を投函していくのですが、その雑貨店が、いつしか過去と現代をつなぐ郵便ポストの役割りを果たしていきます。
そして、様々な悩みが時空を超えて取り交わされた時、そこに信じられない繋がりが浮かび上がってくるんです。その一つ一つのつながりをつなぐ東野さんの技がすごいですね。感心させられます。
人というのは、基本的に弱い生き物だと思います。何かに直面し、困った時には近くにいる誰かに寄りかかるのが自然です。何か困った時には、そうした人に相談するのが一番ですね。
この本を読んだ方が感想でおっしゃってました。
人は、相談するときに、実は答えを導いてほしくてするんじゃなくて、自分の答えに対して背中を押してほしくてするんじゃないのかと…。まさに、そうだと思います。皆さんは、この本を読んで、人に打ち明けること、相談することの意味や、人と人の繋がり、暖かさを改めて感じ、考えることができるのではないでしょうか。
「評価 ★★★★★ ★★★★☆ 90点」
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