「ラグビーのレフリー=反則を取る人」ではない!

2012年02月27日

どんなスポーツにも“審判員”は必要である。

審判員とは、スポーツの試合をルール(競技規則)に則って厳密かつ円滑に進行・成立させる役割を担い、判定を下す人物を指す。
このようにルールにもとづき試合を裁き・コントロールする役割の人間がいなければ、どんなに優れたプレイヤーが何人集まろうとも試合は成立しない。

さて、ラグビーというスポーツは、それを経験したことのない人からするとルールがかなり難解だと思われるだろう。
だから良く誤解されるのかもしれないが、ラグビーのレフリー=反則を取る人というイメージをもたれる方もいらっしゃる。

非常に耳の痛い話であるが、実際に笛を吹いておられる方の中にも、表向きは違うが(その考え方の根底に)そのようなイメージが定着してしまっている方もいらっしゃる。

ラグビーのレフリーは「反則を取る人」ではなく、“選手の最高のパフォーマンスを演出し、観客を魅了する試合を作ること”である。
そして、「反則を取る」という行為は、上記の目的を達するための一つの手段にすぎない。

日本ラグビーフットボール協会の示した「2011年レフリング指針」の基本方針には、次のようにある。
  
「安全性、公正及び一貫性を持ったレフリングで、ダイナミックかつ継続性のあるラグビーを創出し、チーム、プレーヤー及び観客に最高の感動を与える。」

さらに、加えて「具体的目標」が次のように定められている。

「・安全性を最優先したレフリング(カテゴリーに応じて)
 ・不正・不当なプレーに対して厳格かつ一貫性のあるレフリング
 ・クリアーなブレイクダウンの判定とコントロール
 ・プレーの継続性を見極めて、不要なアドバンテージや影響ある反則を放置しない。
 ・プレーの流れを阻害しない効果的なコミュニケーションの実行
 ・アシスタントレフリーとの連係によるチームオブスリーの機能発揮」


こうした指針、目標をもとにして我々レフリーは、笛を吹いていかなくてはならず、指針に掲げられた、“ダイナミックかつ継続性のあるラグビーの創出”と“チーム、プレーヤー及び観客に最高の感動を与える”ために、その資質向上に日々努めなければならない。

今回、その資質向上に向けた滅多にないチャンスを頂くことができた。
それが、九州協会の石本月洋氏を迎えて25日、26日に行われた九州ラグビーフットボール協会主催の「レフリー巡回指導講習会」である。

今回は、26日に県総合運動公園で開催されたKBCラグビー祭りの決勝という舞台でレフリーを務めるという滅多にない機会を頂き、さらにはその試合の映像をもとに、様々な角度からアドバイスを頂くことができ大変参考になった。

そこで、いろいろな指摘を頂いたが、特に重要だなと思ったのが、上記の「具体的目標」の「プレーの継続性を見極めて、不要なアドバンテージや影響ある反則を放置しない。」という点に関わることである。

ラグビーの醍醐味は、プレーの継続性にある。
その継続性を生み出すのもレフリーの役目であり、時には、危険なプレーではなく、試合の流れに影響しない反則であれば、笛は吹かないこともあるし、反則やあっても反則がなかったチームに有利にボールが動けば、“アドバンテージ”を採用し、そのままプレーを流すこともある。

第一に、今回、強く考えさせられたのは、“アドバンテージ”の取り方である。

今まで何度か反省点となっていたのだが、(1)“アドバンテージ“を採用したが、採用された側のチームに有効にそれが働かなかったことが何度かある。

反対に、(2)アドバンテージを採用した方が良かったのに、安易に反則の笛を吹いてしまったがために、反則を犯さなかったチームに対してディスアドバンテージを与えてしまったケースもある。

(1)の場合は、もとの反則のあったポイントに戻ってリスタートするのであるが、安易にアドバンテージを採用するのではなく、反則行われたエリア、状況、ボールの動き、そのチームの特性を見極めながら、アドバンテージを採用するべきか、そうでないかを判断する、そのさじ加減が最も大事であることを再認識させられた。

また、今回もあったのだが、(2)のように、アドバンテージを取るべき場面で反則の笛を吹いてしまったがために、反則をしなかったチームにディスアドバンテージを与えた場面もいくつかあった。

例えば、次のような状況を想定してみよう。
Aチームが相手陣ゴール前10Mでモールを押し続けている最中に、モール中で相手チームの選手に非紳士的なプレー(イエローカードで一時退場に該当)があった場合、レフリーとしてどのように判断するべきか。

これまでの私は、”高校生の試合なので”、教育的指導も含めてすぐに笛を吹いて、その非紳士的なプレーに対して強い指導をするべきだと思って判断し笛を吹いていた。

が、その笛は、同時にAチームのトライするチャンスを奪うという行為にもなっていたのである。
私の笛は、反則しなかったAチームに不利に働いてしまっていた。

この場合、大切なことは、(1)にも言えたことだが、やはりそのエリアと状況、チームの特性(戦術)の見極めであっただろう。

Aチームがモールを主体にゴール前でトライを取りに来ていること、エリアがゴール前10Mだったことなどを考慮する視点が、これまでの私には全く欠けていたことになる。

今回のケースの場合、適切な処置としては、まずAチームに有利に動いているモールを継続させ、仮にトライが生まれたのであれば、そのトライの後に、反則を犯したBチームの選手とキャプテンを呼び、教育的指導とイエローカードの提示による一時退場を命じるという流れがAチームに対しても、Bチームに対しても最善の判断だっただろうということである。

こうした視点は、なかなか日々の経験の中では、生み出すことができない部分であった。
今回、こうした視点を得ることができたのも、この巡回指導のお陰である。

選手の良さ、チームの良さ、試合の流れの良さをレフリングで殺すことなく、レフリングによって最大限に引き出すこと、これこそがまさにレフリーの役目であるということを改めて強く認識させたれら二日間であった。

そうした判断ができるのか否かには、やはり私のこれまでの経験や努力とそこから生まれる判断力に加えて人間性が大きく関わってくる。
そして、レフリーへの評価=それらの経験、努力、判断力などへの評価であり、そうした評価が選手や監督、観客からの信頼を生み出すことに繋がり、その信頼がベストゲームを創造するために最も大事な要素となる。

よいレフリングを目指し、日々精進し、体力だけでなく、判断力、人間性を研いていく意欲的・積極的な姿勢を持ち続けること、それこそが、レフリーとしてだけでなく、指導者としての資質向上において欠かせない大事な点であることを強く意識させられた。

同時に、現在のレベルにいたる過程で、日常の指導の中で判断の基準について指導いただいた宮城先生の存在がなければ、現在の私はいまここにいない。
38歳というかなり遅れて九州協会公認のB級レフリーを目指すきっかけを与えてくれたのも、宮城先生であった。

さらには、名護校での4年間の経験も私にとって貴重な財産である。
常に高みを目指し日々チーム内で切磋琢磨する選手たちのプレーにたいして笛を吹く機会を何度も与えて貰い、選手たちからの実直な生の意見を聞くことができたことも、いろいろと考えさせられ、現在の私の判断力を養う機会となったし、選手の気持ちを理解するための素養を与えてくれた。

その他にも多くの方々の意見や叱咤激励が現在の私を形作っている。
この場を借りて感謝したい。
そして、その方々のためにも、これからもしっかり頑張っていきたい。

また、今回、このような機会を与えてくださった九州ラグビーフットボール協会、ならびに石本氏、さらには沖縄県ラグビーフットボール協会、レフリー委員長の屋良先生に、この場をかりて感謝したい。



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Posted by no-bu at 08:20│Comments(0)スポーツ
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