読書「『のび太』という生き方」

2012年05月09日

いきなりだが、次の感想文を読んでみて欲しい。
ちょっと長いが少しおつきあい願いたい。

「ドラえもん」はマンガ世紀の最高傑作と言われ、海外でも人気の高い不朽の名作である。
このマンガの主人公でダメなやつの代名詞にもなっているのび太について多くの読者は、成績が悪く、運動もまるで駄目、先生や母親に叱られることは日常茶飯事、友だちからはいじめられてばかり、しかし、ドラえもんのひみつ道具が彼に夢を運んでくる…と思っているかもしれない。
だが、「のび太という男の子は、じつは想像以上に人生を上手に歩んでいる」と著者は言っている。
僕も本書に出会うまで、「ドラえもん」について、小学生向けのマンガとしか思っていなかったし、無理に回を重ねている感があった。
しかし、実は大部分のひみつ道具に、常に何らかのメッセージがあり、それらを総括して言うと、何が起ころうと自らの力で解決することが最も良い対処法であるということだ。
本書を読んで作者の子供たちへのメッセージが「ドラえもん」の底流にあることを知り、目から鱗が落ちた。
また、「ドラえもん」の内容は多様化しており、いじめや、不登校、自殺志願といった問題から、環境問題など、現代社会が抱えている問題を、その問題に対する価値あるメッセージと共に取り込んでいると著者は分析している。
このように考えると、「ドラえもん」は非常に奥が深く、「所詮はマンガ」の一言では片付けられないように思う。
のび太はひみつ道具の助けや自らが置かれた境遇により、潜在意識の中で眠っていた、優れた資質が現れた。
言いかえれば、のび太の中で眠っていた原石がひみつ道具などにより磨かれていった結果、美しく輝く宝石となったのである。僕の中に眠る原石はまだ、宝石にはなっていないけれども、磨くことができるきっかけを可能なだけ掴みたいと思う。
 僕は心配症でマイナス方向に考えすぎだとよく言われる。これは自分でも感じていることで、例を挙げれば数限りないほどだ。また、自分に対する自信もなく、よく失敗してしまう。
よく失敗する点は似ているが、僕とのび太との大きな違いは楽観的か悲観的かという点だと思う。
のび太はあまり事態を深刻に受け止めることなく、何事に対しても、失敗を恐れずに比較的さらりと対応する。
しかし、僕はと言うと、何事も深刻に受け止めすぎる傾向があり、失敗を恐れてなかなか行動に移ることができない。
まず、夢を叶えるために、先の事をあまり深く考えず、今取りくんでいる事に全力を尽くし、失敗してしまったら再度チャレンジすればいいという考えを念頭に置いておきたいと思う。
「ほかのものが目に入らないほどの集中力を持って目標に打ち込むことで、『くじけない心』は、さらに強さを増すことができる」と著者は言う。
「くじけない心」は僕に決定的に足りないものである。
しかし、今の僕には一心不乱になって打ち込むことができるものがないので、まずそれを探さなくてはならない。
また、のび太はどんなに痛めつけられても、悪口や妬みよりも、「なにくそ」といった反発力の方ヘエネルギーを昇華させている。このように、悪口を口にせず、行動するためには、他人の素晴らしい面を素直に「いいな」と肯定する姿勢が必要で、そういう姿勢が、自分を成長させられるのである。
しかし、「いいな」と肯定することはできても、悪口や妬みにエネルギーを使わないのは難しいと思う。
これも心のゆとりが関係しているのだろう。
本書を読み進めて、夢を叶えるための法則と今の自分との違いを知り、少々落ち込んでいる中で、ただ一つ一致しているものがあった。
それは、「欲があまり無い」という点である。
この一致は非常に嬉しく思えた。のび太の長所として代表的なものに、優しく何に対しても分け隔てなく接することができるというものがあり、そのような姿勢が楽しく暮らしながら夢を叶える基礎だと著者は言っている。
つまり今も社会に根強く残っている差別や偏見を無くし、相手がどんなものであれ、優しく接しようということだ。
これは個人がそれぞれ自覚しなくてはいけないと思う。
また、藤子・F・不二雄が「ドラえもん」を描いていた頃よりも、大人も子供も忙しくなっているので、その分、ストレスが溜まりやすいと思う。
それは少年犯罪の件数が増えていることからも分かる。
日々、メディアを騒がせている少年犯罪の中には、両親や学校の先生に見離されたことが原因となっているように見受けられるものがある。
親が子供を叱ることは、実は子供がまだ親に信用されており、見離されてはいないことの証なのだということを改めて感じた。
 ダメなやつの代名詞であるのび太から人生について学んだことは癪ではあるが、僕以外にものび太から色々と学ぶべき人々は沢山いると思う。
やがて勝ち組となるであろうのび太の生き方を見ていると、大らかに、前向きに、自分を見失うことなく、淡々と生きていく事が大切だと思うし、親や友だち、ひいては社会に受け入れられているという実感もとても大切なことだと思った。
また、のび太が夢を叶えることが出来た根本的な理由はドラえもんと出会ったからである。つまり、ドラえもんはロボットの形をした希望そのものであると言える。
僕にロボットの形をしたドラえもんはいないけれども、心の中にドラえもんは存在する。
希望を持ち続けることにより、心の輝きを失わずに、豊かな人生を送りたいと思う。」


この感想文は、逗子開成中学高等学校の糸久拓見という子の書いた「『のび太』という生き方」という本の感想である。
この感想文をもとに2004年に発行されたある本が、いま再度、話題になっている。
それが、今回紹介する「『のび太』という生き方」横山泰行著、アスコムである。
読書「『のび太』という生き方」



国民的漫画『ドラえもん』の主人公、野比のび太。
ご存じのように、勉強もスポーツもできずルックスもイマイチ。
常に何らかのトラブルに巻き込まれがちであるが、そんな時にはいつでも未来からやってきた猫型ロボットのドラえもんをはじめとした誰かが助けてくれて、最終的には、あのクラスのマドンナ・しずかちゃんと結婚!
表面的には、いわゆる“ダメ人間”のように見えてしまうのだが、結果論的には実は“勝ち組”に属する。

こう書いていくと、いや普通の見方・考え方からすると、「のび太の生き方」から学べ!と言われると、何でもかんでも他人任せで優柔不断のダメ人間、すべてドラえもんのおかげでラッキーを手に入れ勝ち組になった奴から学ぶ事なんてあるか!と思われるだろう。

しかし、富山大学名誉教授で「ドラえもん学」 を研究し、本書『「のび太」という生きかた』の著者である横山泰行先生は次のような見方をしている。
ちなみに、横山先生は、富山大学で「ドラえもん学」なるものをを研究し、年間平均2000時間、全作品を50回以上も読んでいるという第一人者。

結論から言わせてもらうと、“目から鱗”とはまさにこのことだと思った。
のび太というのは、単なる“ダメな奴”では無く、彼が勝ち組になるには、それなりの根拠があったんだなということに気づかされた。

「ドラえもんは、のび太のことを助けているというイメージがありますが、実は助けているんじゃなくて、 のび太が何かしようとすることを後押ししているだけなんです。『ドラえもん』は “ひみつ道具”を中心に話が展開していきますが、最終的には道具に頼らず、のび太自身で問題を解決している。そういう意味で、ひみつ道具はきっかけづくりのひとつなんです」
「のび太にとってひみつ道具とは、あくまでも『自分のいいところ』を伸ばしたり、ちょっと足りない何かを後押ししたり、また潜在意識のなかで眠っているのび太の優しい心を覚醒させたりする、触媒のような存在なのです。」

本書を読んで、良く分かったことですが、言われてみれば、のび太は色々な意味で、“チャレンジング”な生き方をしています。しかし、あくまでも“チャレンジング“なだけであって、実は”思ったらすぐ行動する“だけで、そこには多くの失敗が残されます。
しかし、大事なことは、そのチャレンジと失敗から、のび太は自分にあったやり方を発見しているし、諦めなければ、いつかは克服できるというメッセージを多くの人に発しているのです。
カッコつけずに、誰にでも優しく、失敗を恐れずにチャレンジし続ける。そうすれば幸せな人生を 手に入れることができる。のび太は、そう教えてくれているのです。
さらにいうと、どんなに意地悪されても、のび太はジャイアンにもスネ夫にも、誰にでも優しくすることができるし、他人の素晴らしい面を素直に認めることのできる人なのです。

そんな彼の素晴らしさを指し示す一番のエピソード。
ドラえもん の短編25巻の『のび太の結婚前夜』で、のび太との結婚に不安になったしずかちゃんに対し、しずかちゃんのパパは、次のようにアドバイスします。
「のび太くんを選んだきみの判断は正しかったと思うよ。あの青年は人の幸せを願い、人の不幸を悲しむことのできる人だ。それがいちばん人間にとってだいじなことなんだからね」
ステキな話じゃないですか?
皆さんもぜひ、本書から、背伸びしないで今の時代を生きるあなたなりのヒントを見つけてみてはどうでしょうか?

「人は共感できる夢を持ち、その夢に対するあなたの熱意がまわりに伝われば、自然と協力者が現れ、夢はおのずと叶いやすくなる。」(p103)

「つまり、のび太なりに負けん気を起こして、積極果敢に彼らにチャレンジしています。こうした積極的なエネルギーの積み重ねのなかにこそ、夢が生まれたり、夢が叶わないかが潜んでいるのです。」(p127)

「評価 ★★★★★ ★★★★☆ 90点」



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Posted by no-bu at 07:10│Comments(1)読書
この記事へのコメント
no-buさん
いつかは夢は叶う!叶えさせてやる~ぅ!と、いつの日からかなくなっている自分がいました(>_<)今は、自分の事2番に子供達の事をと・・・思っていましたが(*^_^*)
ダメ人間と周りからの偏見がその人を強くしたり、落としたりと色んなとらえ方がありますね!
いじめやこの世の中の情勢が変わるのも、変えていくのもすべて『人間』です。
人間は100%ではありません。何かしら、欠点はあり、利点はあると思います。
自分が落ちたときに、『ドラえもんが存在すればなぁ~』って、泣きたくなるよ!
すみませんm(_ _)m話しが、あまはいくまはいですが、自分を大事にしていきます。
良い本紹介ありがとう(^^)/
Posted by ちぃぼ~ at 2012年05月09日 11:47
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