読書の記録~『ワーキングプア』
2008年02月16日
労働人口の4人に1人は生活保護水準で暮らしている!
ベストセラーエコノミストが、「働く貧困層」という格差問題に警鐘を鳴らす。
私のもう一つのストレス解消法が読書です。
門倉貴史著
『ワーキングプア~いくら働いても報われない時代が来る』
宝島者新書、2006年、を読んでみました。

ベストセラーエコノミストが、「働く貧困層」という格差問題に警鐘を鳴らす。
私のもう一つのストレス解消法が読書です。
門倉貴史著
『ワーキングプア~いくら働いても報われない時代が来る』
宝島者新書、2006年、を読んでみました。

高校生にとって、働くという事は(大学や専門学校に進む時間的余裕を考慮しても)目の前に迫った事でもあります。
しかし、アルバイトは経験している生徒も中にはいるにはいるのですが、経済的に自立して生活をする事とどのように働くかという事、そして、どのような未来像・人生像を想像するのかという事に対しての考え方はかなり甘い気がします。
特に沖縄の高校生はそうなのかもしれません。
これは、いわゆる「テーゲー」でなあなあが許容される部分が多い沖縄の文化性の問題とも関連して、高校生だけでなく、もしかするとある意味大人に対してもいえる事かも知れません。(少々、言い過ぎでしょうか
)
きちんと目の前の状況を認識・分析せずに労働市場に投げ込まれる彼らの多くがフリーターやニートとなり、ここでいう「ワーキングプア」に将来陥ってしまう可能性は非常に高いといえます。
では、まずここで本書からの引用で「ワーキングプア」に関して、みなさんの理解度を図ってみたいと思います。
問1:世界で最も豊かな国といわれる米国には「ワーキングプア」と呼ばれる人たちがどれくらいいるでしょうか。
①約570万人 ②約1700万人 ③約2700万人 ④約3700万人
問2:日本で「ワーキングプア」といった場合、年収がどれくらいの人を指すでしょうか?
①年収500万円未満 ②年収300万円未満 ③年収250万円未満 ④年収200万円未満
問3:現在の日本には「ワーキングプア」と呼ばれる人々がどれくらいいるでしょうか。
①約150万人 ②約250万人 ③約350万人 ④約550万人
問4:日本で生活保護を受けている世帯の数はどれぐらいになるでしょうか。
①約10万世帯 ②約50万世帯 ③約100万世帯 ④約150万世帯
問5:日本の最低賃金はどれくらいの金額でしょうか。
①時給610円 ②時給710円 ③時給810円 ④時給910円
問6:15歳から34歳の非正社員の数はどれくらいの数に上るでしょうか。
①約200万人 ②約400万人 ③約600万人 ④約800万人
問7:日本では、どれぐらいの数の人が派遣社員として働いているでしょうか。
①約80万人 ②約130万人 ③約170万人 ④約230万人
問1の解答④ 問2の解答④ 問3の解答④ 問4の解答③ 問5の解答① 問6の解答③ 問7の解答④
(本書p4~9)
みなさんは、いったい何問正解することができたでしょうか?
筆者は言っています。
「本書を読んで『ワーキングプア』の問題がいかに深刻であるかを肌で感じ取ってもらいたい。『ワーキングプア』は誰にでもおこりうるきわめて身近な問題であるのだから…」(p9)
筆者のいうように「ワーキングプア」の問題は、決して対岸の火事ではありません。
小泉前首相が進めた構造改革による自由主義経済と民営化の結果として生み出された格差社会と言われる状況の中で、いつ誰がそういう状況に陥ってしまうかわからないのです。
国民の誰もがそういう不安を抱えながら生きているのではないでしょうか。
そういう不安を抱えながら、ただ漫然と流れに任せて生きるのではなく、きちんと現状を認識・分析する事がまずは大事なことだといえます。
本書は、「日本の労働者の4人に1人は生活保護水準で暮らしている」現実、言い換えると、「日本の労働者の4人に1人は『ワーキングプア』」という悲惨さを知るための入門書と位置づけることができるでしょう。
日本が社会構造的に「ワーキングプア」といわれる階層を創り出していく仕組みがよく分かる本だといえます。
関連する統計、論点、対策方向をかなりうまくまとめられています。
今、ウチアタイされているあなた、ぜひ、一読された方がよろしいかと…。
(目次)
はじめに
第1章 日本の労働者の4人に1人は生活保護水準で暮らしている
第2章 働き盛りの中年家庭を襲う「ワーキングプア」の恐怖
第3章 崩壊する日本型雇用システム
第4章 非正社員で働く若者たち
第5章 「構造改革」による自由主義経済と民営化の果てに
あとがき
筆者のワーキングプアの定義は、以下の通りです。
「働いているのに、年間収入が200万円未満の人たち」
この定義の根拠は、東京23区の生活保護水準が年間支出194万6040円だということによるらしいです。 賃金構造基本統計をみると05年度にこの数字にあてはまるのは546万860人で、これは労働者の25%に相当する数ということです。
こうした状況を生み出した原因として、筆者は第一に次の点を強調しています。
これは、私自身が以前から感じていた事とも同じだし、以前読んだ『「ニート」っていうな!』(光文社、2006年)で著者の本田由紀の現状・問題認識とも同じです。
「最大の要因は、日本の企業が正社員の数を減らして、派遣社員や契約社員、嘱託社員、パートタイマー、アルバイトといった、いわゆる非正社員の数を増やしていることがある」(p22)
門倉自身も「若者がニート化する原因はさまざまであるが、大きな要因のひとつとして雇用環境の悪化を挙げることができる」(p149)と指摘し、それを裏付ける根拠となるデータを示しています。→「ニート比率と失業比率の関係」、「若者がニートになる原因」(p149~155)
端的に言うと、日本でワーキングプアに陥りやすい層は、非正社員の人たちなわけです。
正社員以外の人たち、つまり、パート、アルバイト、派遣社員、契約社員など、近年の構造改革、規制緩和の流れの中で色々な雇用形態が生まれてきていますが、これらの雇用形態ににおいては、雇用が不安定で、低い賃金で働く人が多く、そういう人たちが、そうでない人たちと比較して「ワーキングプア」なりやすい傾向があるようです。
近年、企業業績は伸びてきていますが、「グローバル競争で勝ち抜くため」という名目のもと、コストカット、賃金カットを行い、同時に、正社員よりも非正社員を増やして対応していこうとしているところに大きな問題があるといえます。
筆者は、こうした現状を打開していくため、いくつかの提言をおこなっています。
まず、第一に「最低賃金を上昇させること」
この前の新聞記事にも各都道府県毎の最低賃金の一覧が掲載されていましたね。
ちなみに19年の最低賃金は次のようになっています。
こちら
現在、日本の最低賃金は全国平均で687円です。
これは国際的に見てもかなり低い水準で、筆者はこれを、まずは1000円ぐらいにすれば、生活水準が上がり、ワーキングプアを減らすことができるのではないかと指摘しています。その他にも、「非正社員から正社員になる道を広く開放する」、「消費税増税ではなく支出税の創設を」など具体的で興味深い提案がおこなわれています。(詳しくは、本書を一読ください。)
これらの提言を参考にしながら、社会構造の変革を進めていくために、行政により今後どのような具体策がとられていくのかが大切なところです。
こうしワーキングプアの増大は、長期的に見ると、経済や社会に大きなダメージをもたらすの間違いありません。
低所得者の増加が消費の減少へつながり、それがさらには、所得税や住民税、消費税などの税収の伸び悩みとなって、国や地方自治体の財政悪化へとつながっていく事は明らかです。
先日、読書の記録~『格差が遺伝する』~でも書いたように、経済的格差が文化的格差を生み出していく、つまり、親の貧困が子どもに波及し、進学を断念する層が増え、人材育成の部分でも大きな問題を生み出すはずですから…。
こうした経済的問題により、能力があるにも関わらず進学を断念し、就職を余儀なくされる生徒は、現在でも少なくないです。
さらに言えば、低所得と雇用の不安定化の中では、自分の将来像を描くのも容易ではありません。結婚や出産はまさに夢物語で、その事が今後も少子化に拍車をかけることにもなります。
これらの点からも、門倉が提案するように、最低賃金を引き上げるのはもちろんのこと、それ以外にも労働者が「報われる」システムづくりをどう進めていくかが大切ではないでしょうか。
そのために、私たち国民は、行政に対して何をするべきでしょうか。
しかし、アルバイトは経験している生徒も中にはいるにはいるのですが、経済的に自立して生活をする事とどのように働くかという事、そして、どのような未来像・人生像を想像するのかという事に対しての考え方はかなり甘い気がします。
特に沖縄の高校生はそうなのかもしれません。
これは、いわゆる「テーゲー」でなあなあが許容される部分が多い沖縄の文化性の問題とも関連して、高校生だけでなく、もしかするとある意味大人に対してもいえる事かも知れません。(少々、言い過ぎでしょうか

きちんと目の前の状況を認識・分析せずに労働市場に投げ込まれる彼らの多くがフリーターやニートとなり、ここでいう「ワーキングプア」に将来陥ってしまう可能性は非常に高いといえます。
では、まずここで本書からの引用で「ワーキングプア」に関して、みなさんの理解度を図ってみたいと思います。
問1:世界で最も豊かな国といわれる米国には「ワーキングプア」と呼ばれる人たちがどれくらいいるでしょうか。
①約570万人 ②約1700万人 ③約2700万人 ④約3700万人
問2:日本で「ワーキングプア」といった場合、年収がどれくらいの人を指すでしょうか?
①年収500万円未満 ②年収300万円未満 ③年収250万円未満 ④年収200万円未満
問3:現在の日本には「ワーキングプア」と呼ばれる人々がどれくらいいるでしょうか。
①約150万人 ②約250万人 ③約350万人 ④約550万人
問4:日本で生活保護を受けている世帯の数はどれぐらいになるでしょうか。
①約10万世帯 ②約50万世帯 ③約100万世帯 ④約150万世帯
問5:日本の最低賃金はどれくらいの金額でしょうか。
①時給610円 ②時給710円 ③時給810円 ④時給910円
問6:15歳から34歳の非正社員の数はどれくらいの数に上るでしょうか。
①約200万人 ②約400万人 ③約600万人 ④約800万人
問7:日本では、どれぐらいの数の人が派遣社員として働いているでしょうか。
①約80万人 ②約130万人 ③約170万人 ④約230万人
問1の解答④ 問2の解答④ 問3の解答④ 問4の解答③ 問5の解答① 問6の解答③ 問7の解答④
(本書p4~9)
みなさんは、いったい何問正解することができたでしょうか?
筆者は言っています。
「本書を読んで『ワーキングプア』の問題がいかに深刻であるかを肌で感じ取ってもらいたい。『ワーキングプア』は誰にでもおこりうるきわめて身近な問題であるのだから…」(p9)
筆者のいうように「ワーキングプア」の問題は、決して対岸の火事ではありません。
小泉前首相が進めた構造改革による自由主義経済と民営化の結果として生み出された格差社会と言われる状況の中で、いつ誰がそういう状況に陥ってしまうかわからないのです。
国民の誰もがそういう不安を抱えながら生きているのではないでしょうか。
そういう不安を抱えながら、ただ漫然と流れに任せて生きるのではなく、きちんと現状を認識・分析する事がまずは大事なことだといえます。
本書は、「日本の労働者の4人に1人は生活保護水準で暮らしている」現実、言い換えると、「日本の労働者の4人に1人は『ワーキングプア』」という悲惨さを知るための入門書と位置づけることができるでしょう。
日本が社会構造的に「ワーキングプア」といわれる階層を創り出していく仕組みがよく分かる本だといえます。
関連する統計、論点、対策方向をかなりうまくまとめられています。
今、ウチアタイされているあなた、ぜひ、一読された方がよろしいかと…。
(目次)
はじめに
第1章 日本の労働者の4人に1人は生活保護水準で暮らしている
第2章 働き盛りの中年家庭を襲う「ワーキングプア」の恐怖
第3章 崩壊する日本型雇用システム
第4章 非正社員で働く若者たち
第5章 「構造改革」による自由主義経済と民営化の果てに
あとがき
筆者のワーキングプアの定義は、以下の通りです。
「働いているのに、年間収入が200万円未満の人たち」
この定義の根拠は、東京23区の生活保護水準が年間支出194万6040円だということによるらしいです。 賃金構造基本統計をみると05年度にこの数字にあてはまるのは546万860人で、これは労働者の25%に相当する数ということです。
こうした状況を生み出した原因として、筆者は第一に次の点を強調しています。
これは、私自身が以前から感じていた事とも同じだし、以前読んだ『「ニート」っていうな!』(光文社、2006年)で著者の本田由紀の現状・問題認識とも同じです。
「最大の要因は、日本の企業が正社員の数を減らして、派遣社員や契約社員、嘱託社員、パートタイマー、アルバイトといった、いわゆる非正社員の数を増やしていることがある」(p22)
門倉自身も「若者がニート化する原因はさまざまであるが、大きな要因のひとつとして雇用環境の悪化を挙げることができる」(p149)と指摘し、それを裏付ける根拠となるデータを示しています。→「ニート比率と失業比率の関係」、「若者がニートになる原因」(p149~155)
端的に言うと、日本でワーキングプアに陥りやすい層は、非正社員の人たちなわけです。
正社員以外の人たち、つまり、パート、アルバイト、派遣社員、契約社員など、近年の構造改革、規制緩和の流れの中で色々な雇用形態が生まれてきていますが、これらの雇用形態ににおいては、雇用が不安定で、低い賃金で働く人が多く、そういう人たちが、そうでない人たちと比較して「ワーキングプア」なりやすい傾向があるようです。
近年、企業業績は伸びてきていますが、「グローバル競争で勝ち抜くため」という名目のもと、コストカット、賃金カットを行い、同時に、正社員よりも非正社員を増やして対応していこうとしているところに大きな問題があるといえます。
筆者は、こうした現状を打開していくため、いくつかの提言をおこなっています。
まず、第一に「最低賃金を上昇させること」
この前の新聞記事にも各都道府県毎の最低賃金の一覧が掲載されていましたね。
ちなみに19年の最低賃金は次のようになっています。

現在、日本の最低賃金は全国平均で687円です。
これは国際的に見てもかなり低い水準で、筆者はこれを、まずは1000円ぐらいにすれば、生活水準が上がり、ワーキングプアを減らすことができるのではないかと指摘しています。その他にも、「非正社員から正社員になる道を広く開放する」、「消費税増税ではなく支出税の創設を」など具体的で興味深い提案がおこなわれています。(詳しくは、本書を一読ください。)
これらの提言を参考にしながら、社会構造の変革を進めていくために、行政により今後どのような具体策がとられていくのかが大切なところです。
こうしワーキングプアの増大は、長期的に見ると、経済や社会に大きなダメージをもたらすの間違いありません。
低所得者の増加が消費の減少へつながり、それがさらには、所得税や住民税、消費税などの税収の伸び悩みとなって、国や地方自治体の財政悪化へとつながっていく事は明らかです。
先日、読書の記録~『格差が遺伝する』~でも書いたように、経済的格差が文化的格差を生み出していく、つまり、親の貧困が子どもに波及し、進学を断念する層が増え、人材育成の部分でも大きな問題を生み出すはずですから…。
こうした経済的問題により、能力があるにも関わらず進学を断念し、就職を余儀なくされる生徒は、現在でも少なくないです。
さらに言えば、低所得と雇用の不安定化の中では、自分の将来像を描くのも容易ではありません。結婚や出産はまさに夢物語で、その事が今後も少子化に拍車をかけることにもなります。
これらの点からも、門倉が提案するように、最低賃金を引き上げるのはもちろんのこと、それ以外にも労働者が「報われる」システムづくりをどう進めていくかが大切ではないでしょうか。
そのために、私たち国民は、行政に対して何をするべきでしょうか。
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Posted by no-bu at 12:49│Comments(0)
│読書