読書の記録~『派遣のリアル』
2008年03月20日

私の担当する政治・経済でも「労働」について焦点を絞り学習していきます。
それから、進路指導という視点からも現在の労働環境について知っておかなければなりません。
教材研究として、同じ著者の書いた「派遣のリアル」読んでみました。
「本書帯より」
ワンコールワーカー、偽装請負、データ装備費問題、ネットカフェ難民…「ハケン」から日本の未来が見えてくる。
『ワーキングプア』の門倉貴史が鋭く問う!
派遣労働者、大手派遣会社社員への取材ドキュメントも10本収録
◆目次
はじめに
第1章 日給6000円で働く人たち
拡大する日本の人材派遣市場
派遣会社の形態あれこれ
やむを得ず派遣労働者となった人たち…ほか
第2章 10分で分かる派遣の歴史
1985年までは禁じ手だった日本の派遣ビジネス
1966年に米国の人材派遣会社が日本に上陸
1986年に成立した「労働者派遣法」…ほか
第3章 使い捨てられる女性派遣の現実
理想と現実のギャップが大きい派遣の世界
増加する女性の派遣社員
企業への不満を募らせる女性の派遣社員…ほか
第4章 ネットカフェ難民と団塊派遣
ホームレスが減少する傍らで増える「ネットカフェ難民」
「ネットカフェ難民」になりやすい「ワンコール・ワーカー」
「ネットカフェ難民」増加の背景は?…ほか
第5章 労働ビッグバンは派遣に何をもたらすのか?
「労働ビッグバン」は派遣社員を救えるのか?
骨抜きになった労働契約法案
賛否両論となる「労働者派遣法」の改正…ほか
あとがき
派遣をめぐっては、新聞やニュースをにぎわしているように様々な問題が噴出しています
2月16日20時59分配信 産経新聞より
GW元派遣社員、ずさんな実態証言 「派遣先毎回違う」
人材派遣大手「グッドウィル」(GW、東京都港区)の二重派遣など職業安定法違反事件で、港湾関連会社「東和リース」(同)に派遣されていた女性が産経新聞の取材に応じ、「どこへ行くか告げられなかった。
派遣される先が毎回変わった」などと、二重派遣の実態を語った。
また、GWと東和リースが交わした契約書の不備も判明。同法違反(労働者供給事業の禁止)容疑で両社などを家宅捜索した警視庁保安課は、押収した資料の分析を急ぎ、GW本店の関与も調べている。(森浩)
■見知らぬ場所
「どこに行くか告げられなかった。寂しい倉庫街に向かうときは、『海に沈められるのでは』と怖くなった」
GWから東和リースに派遣されていた横浜市の女性(44)は、車で見知らぬ派遣先へと向かう“恐怖”を口にした。
運転手も同乗者も見知らぬ人で、作業内容も告げられなかった。
車内でもほとんど無言で、不安感が募ったという。
平成15年にGWに登録した女性は、東和リースに10回ほど派遣された。
指定場所に集まると、GW担当者の指示で車に乗せられ、“本当の”派遣先へ連れて行かれた。
「行き先は毎回変わり、『東和リースはなんて支店が多い会社だ』と最初は思った」と振り返る。だが、港区にある東和リースの社内に入ったことはないという。
ある日、連れて行かれた先は、東京・青海の東京湾に面する倉庫だった。
仕事はワインのラベル確認など単純作業。勤務時間は午前8時~午後5時で、日給5000円強だった。女性によると、作業中、GW関係者が立ち会っていたという。
「二重派遣をGWが知らなかったことはあり得ない」。
憤る女性は何度も派遣先が違うことをGWの支店に訴えたが、取り合ってもらえなかったという。
■ずさんな契約
そもそも、GWと東和リースの間で交わされた派遣契約は、契約書そのものに不備があった。
関係者によると、契約書には労働者が派遣先で従事する業務内容などを明示しなくてはならない。
しかし、こうした重要項目の記載漏れがたびたびあったという。
また、労働者派遣法では「一般的な派遣労働は臨時的なもの」という考え方のもと、原則として派遣期間を最長1年に制限している。
労働者の派遣を受け入れる企業は、派遣元に満了日を通知する義務がある。
だが、東和リースはGWに通知していなかった。
その結果、GWが東和リースに労働者を派遣する期間は制限の1年を大幅に超過。平成16年10月1日から19年6月28日まで2年9カ月に及び、この間に延べ1240人の労働者が派遣されていた。
厚生労働省の関係者は「両社のずさんさが、二重派遣を容易にする素地となっていた」と指摘している。
もう一つ問題となっているのが、危険が伴うなどの理由で労働者派遣法が禁じる港湾業務への労働者派遣だ。
東和リースに派遣されていた労働者のうち16年10月~昨年6月に52人が港湾業務に当たっていたが、GWは「バン出し(荷出し)の作業をした」などと報告を受けていた。
GW支店関係者は厚労省の調べに「港湾事業に従事することを知っていた」と法律違反を認めていた。
警視庁は、支店だけではなく、GW本店も違法性を知っていた可能性もあるとみて、同法違反の疑いで調べを進めている。
この記事を読んでみて、皆さんはどう思われたでしょうか?
もしかすると、身近にそういう実態がない方にとっては、リアルにこの問題を感じることができない方もいるでしょうか?
これらの問題がなぜ起こっているのか?
外国と比べて日本の派遣市場はどのように違うのか?
等々、本書では論点がわかりやすく整理されていますので、そういった方にもとても親切な内容だと思います。
また、派遣社員へのインタビューも多数掲載され、書名同様「リアル」に派遣の世界を知ることができます。
では、考えていきましょう。
格差社会の根っこには、何があるのか?
その根の一つが労働法制の「規制緩和」です。
憲法で保障されている「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」である生存権を働く者すべてに保障すためには、規制緩和した部分、労働者派遣法を抜本的に改正することが必要です。
しかし、時代はそれに逆行しています。
政府の諮問機関である労働政策審議会(労働力需給制度部会)で労働者派遣法の見直しが進んでいるようです。
2007年末に報告書がでているようです。
その報告書からも分かるように、日本経団連では、こうした規制緩和の流れをさらに加速させようと躍起になっています。
例えば、現行法では期間がきたら派遣労働者に直接雇用を申し込まないといけないのが、この制度の廃止を要求しているし、発注元企業が指揮命令をすることはゆるされていない請負にたいしてこれを認める、つまり上記で問題となった偽装請負を合法化せよと要求しています。
おそらく、これまでの流れからすると、政府与党は、そうした企業と結託し、こうした要求を実現化するでしょう。
詳しくはこちらを
本書の著者である門倉は、こうした労働者側の思いと逆行する時代状況に対して、次のように批判しています。
ダウンサイジング、非正規への代替化は、個人消費の抑制もふくめ、結局経済自体をむしばんでしまう。
特に、現在、少子化をむかえて優秀な労働力の確保が企業の課題となっているのだから、コスト最優先でやっている企業は逆に労働者から見捨てられる!と…。
簡単にいうと、正社員化は短期的には企業の利益にはならないが、長期的には企業利益にかなうのではないかというものです。
私も本書を読んで、まさにそうであると感じます。
政府与党ならびに税制面など色々な面で優遇されている大企業の方々、目先の利益だけを考えていたら、日本は滅びちゃいますよ!
GW元派遣社員、ずさんな実態証言 「派遣先毎回違う」
人材派遣大手「グッドウィル」(GW、東京都港区)の二重派遣など職業安定法違反事件で、港湾関連会社「東和リース」(同)に派遣されていた女性が産経新聞の取材に応じ、「どこへ行くか告げられなかった。
派遣される先が毎回変わった」などと、二重派遣の実態を語った。
また、GWと東和リースが交わした契約書の不備も判明。同法違反(労働者供給事業の禁止)容疑で両社などを家宅捜索した警視庁保安課は、押収した資料の分析を急ぎ、GW本店の関与も調べている。(森浩)
■見知らぬ場所
「どこに行くか告げられなかった。寂しい倉庫街に向かうときは、『海に沈められるのでは』と怖くなった」
GWから東和リースに派遣されていた横浜市の女性(44)は、車で見知らぬ派遣先へと向かう“恐怖”を口にした。
運転手も同乗者も見知らぬ人で、作業内容も告げられなかった。
車内でもほとんど無言で、不安感が募ったという。
平成15年にGWに登録した女性は、東和リースに10回ほど派遣された。
指定場所に集まると、GW担当者の指示で車に乗せられ、“本当の”派遣先へ連れて行かれた。
「行き先は毎回変わり、『東和リースはなんて支店が多い会社だ』と最初は思った」と振り返る。だが、港区にある東和リースの社内に入ったことはないという。
ある日、連れて行かれた先は、東京・青海の東京湾に面する倉庫だった。
仕事はワインのラベル確認など単純作業。勤務時間は午前8時~午後5時で、日給5000円強だった。女性によると、作業中、GW関係者が立ち会っていたという。
「二重派遣をGWが知らなかったことはあり得ない」。
憤る女性は何度も派遣先が違うことをGWの支店に訴えたが、取り合ってもらえなかったという。
■ずさんな契約
そもそも、GWと東和リースの間で交わされた派遣契約は、契約書そのものに不備があった。
関係者によると、契約書には労働者が派遣先で従事する業務内容などを明示しなくてはならない。
しかし、こうした重要項目の記載漏れがたびたびあったという。
また、労働者派遣法では「一般的な派遣労働は臨時的なもの」という考え方のもと、原則として派遣期間を最長1年に制限している。
労働者の派遣を受け入れる企業は、派遣元に満了日を通知する義務がある。
だが、東和リースはGWに通知していなかった。
その結果、GWが東和リースに労働者を派遣する期間は制限の1年を大幅に超過。平成16年10月1日から19年6月28日まで2年9カ月に及び、この間に延べ1240人の労働者が派遣されていた。
厚生労働省の関係者は「両社のずさんさが、二重派遣を容易にする素地となっていた」と指摘している。
もう一つ問題となっているのが、危険が伴うなどの理由で労働者派遣法が禁じる港湾業務への労働者派遣だ。
東和リースに派遣されていた労働者のうち16年10月~昨年6月に52人が港湾業務に当たっていたが、GWは「バン出し(荷出し)の作業をした」などと報告を受けていた。
GW支店関係者は厚労省の調べに「港湾事業に従事することを知っていた」と法律違反を認めていた。
警視庁は、支店だけではなく、GW本店も違法性を知っていた可能性もあるとみて、同法違反の疑いで調べを進めている。
この記事を読んでみて、皆さんはどう思われたでしょうか?
もしかすると、身近にそういう実態がない方にとっては、リアルにこの問題を感じることができない方もいるでしょうか?
これらの問題がなぜ起こっているのか?
外国と比べて日本の派遣市場はどのように違うのか?
等々、本書では論点がわかりやすく整理されていますので、そういった方にもとても親切な内容だと思います。
また、派遣社員へのインタビューも多数掲載され、書名同様「リアル」に派遣の世界を知ることができます。
では、考えていきましょう。
格差社会の根っこには、何があるのか?
その根の一つが労働法制の「規制緩和」です。
憲法で保障されている「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」である生存権を働く者すべてに保障すためには、規制緩和した部分、労働者派遣法を抜本的に改正することが必要です。
しかし、時代はそれに逆行しています。
政府の諮問機関である労働政策審議会(労働力需給制度部会)で労働者派遣法の見直しが進んでいるようです。
2007年末に報告書がでているようです。
その報告書からも分かるように、日本経団連では、こうした規制緩和の流れをさらに加速させようと躍起になっています。
例えば、現行法では期間がきたら派遣労働者に直接雇用を申し込まないといけないのが、この制度の廃止を要求しているし、発注元企業が指揮命令をすることはゆるされていない請負にたいしてこれを認める、つまり上記で問題となった偽装請負を合法化せよと要求しています。
おそらく、これまでの流れからすると、政府与党は、そうした企業と結託し、こうした要求を実現化するでしょう。

本書の著者である門倉は、こうした労働者側の思いと逆行する時代状況に対して、次のように批判しています。
ダウンサイジング、非正規への代替化は、個人消費の抑制もふくめ、結局経済自体をむしばんでしまう。
特に、現在、少子化をむかえて優秀な労働力の確保が企業の課題となっているのだから、コスト最優先でやっている企業は逆に労働者から見捨てられる!と…。
簡単にいうと、正社員化は短期的には企業の利益にはならないが、長期的には企業利益にかなうのではないかというものです。
私も本書を読んで、まさにそうであると感じます。
政府与党ならびに税制面など色々な面で優遇されている大企業の方々、目先の利益だけを考えていたら、日本は滅びちゃいますよ!
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Posted by no-bu at 08:04│Comments(0)
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