映画「アレクサンドリア」(洋画)

2012年04月30日

お久しぶりです。
いやー一ヶ月ぶりの更新です。
とにかく4月は忙しかったです。
新学期、怒濤のように時間が過ぎました。ようやくGWになって少し時間に余裕が持てたかなという感じです。

そこで、久しぶりに史実をもとにした作品を鑑賞。
正直、最初は、あまり期待していなかったが、すごく良い作品だなと感じました。

作品の舞台は、4世紀末、ローマ帝国支配下にあるエジプトの大都市アレクサンドリア。
この都市は、地中海貿易の中心地であることを活かして発展したが、その貿易の中心地であるという利点をもとに、各国の書物を収集し、それらを図書館に集めていた。その数、70万巻もの蔵書があったといわれている。
映画「アレクサンドリア」(洋画)その図書館では、図書館長を務めるテオンの娘で哲学者、天文学者でもあるヒュパティアによって天体についての授業が行われていた。
哲学者といっても、現在のような哲学をイメージするのではなく、彼女の哲学は、初期の自然哲学に分類され、作品中、彼女は、天動説に異論をとなえ、思惟をめぐらせ、新しい理論を展開していこうと仲間と議論し合う。
上でも述べたが、彼女は、著名な数学者と哲学者であったテオンの娘であり400年頃アレクサンドリアの新プラトン主義哲学校の校長になった。彼女はプラトンやアリストテレスらについて講義を行い、彼女の希に見る知的な才能と雄弁さや謙虚さと美しさは、多数の生徒を魅了したという。
宗教を問わずに生徒を集めていた彼女だが、急速に数を増したキリスト教徒が古代の神を侮辱した事から、市民の間に争いが起きる。最終的には、図書館はキリスト教徒に破壊される。数年後、増大するキリスト教徒は、その支配の邪魔になるヒュパティアに狙いをつけた。

映画「アレクサンドリア」(洋画)

「アレクサンドリア」

【監督】
アレハンドロ・アメナーバル
【出演】
○レイチェル・ワイズ(ヒュパティア ):哲学者で天文学者。
○マックス・ミンゲラ(ダオス):ヒュパティアに想いを寄せる奴隷。後に強硬派のキリスト教徒に。
○オスカー・アイザック(オレステス):ヒュパティアを愛する弟子。後にエジプト長官に。
○マイケル・ロンズデール(テオン):ヒュパティアの父。アレクサンドリア図書館の最後の館長。
○サミ・サミール(キュリロス ):強硬派のキリスト教徒。後にアレクサンドリア総主教に。
○アシュラフ・バルフム(アンモニオス): 強硬派のキリスト教徒。オレステスに石をぶつけたことで処刑される。
○ルパート・エヴァンス(シュネシオス): ヒュパティアを慕う弟子。後にキュレネの主教に。
○ホマユン・エルシャディ(アスパシウス):ヒュパティアの奴隷で研究の助手。

この作品の魅力は、史実をもとに、宗教的に迫害されながらも、真理を求め、自らの信念を貫き通したヒュパティアの強さが描かれていると同時に、時には宇宙や上空から場面を俯瞰してみせる手法にあろう。
キリスト教徒が図書館に押し寄せ、書物を焼き払ってしまう様子を上空から俯瞰して見せる、その手法によって、宗教のもつ不寛容さ、人間の醜さを上手に表現している。

このようにして、異教徒を圧倒したキリスト教徒は、次にユダヤ人を迫害していくのだが、このような傍若無人なキリスト教徒の振る舞いのために、かつて栄華を誇ったアレクサンドリアには暴力の嵐が吹き荒れ、その高度な学術都市の面影は失われていく。
史実によると、作品とは違い、ヒュパティアの最期は裸のままキリスト教徒に生きながら牡蠣の貝殻で肉をえぐられ殺され、そのあと切り刻まれて見世物にされたということらしい。こうしたヒュパティアの無惨な死は、多くの学者たちが亡命してしまうきっかけともなり、それが古代の学問の中心地であったアレクサンドリアの凋落を招く一因にもなっている。
作品では、彼女の最後は、別な形で描かれているが、これは、監督が史実に忠実に殺され方に重きをおいて描くよりも、彼女が自らの死とどのように向き合ったかという、哲学者としての死に方を描きたかったためであろう。
本作品を通して、歴史上、過去においても現在においても、宗教のもつ不寛容さが醜い争いと悲しみを生み出しているという事実を考えていかねばと強く感じた。

「評価 ★★★★★ ★★★☆☆ 80点」



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Posted by no-bu at 08:16│Comments(0)映画
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