タイタンズを忘れない

2012年09月16日

「この聖なる地で ひとつにならなければ我々も終る
彼らの同じように
お互い愛し合っていなくても 相手を認めれば
きっといつの日か 人として向き合える」





今回、紹介する作品「タイタンズを忘れない」は、1970年代初頭、まだ人種差別が大きな問題となっていたアメリカで、実際にあったエピソードをもとにした制作されたスポーツ・ヒューマン・ドラマである。

「ストーリー」(※ネタバレあり注意!)

1971年ヴァージニア州アレキサンドリアで起きた実話。
公民権運動によって人種間の壁は取り払われたはずが、人々の心の壁はなかなか打ち砕くことができない。
そんな中、白人と黒人の学校が統合され、T・C・ウィリアムズ高校が開校。フットボールチームも統合“タイタンズ”が結成された。
住民達が統合に反対するなか、黒人ヘッド・コーチ、ハーマン・ブーンがやってきた。白人コーチは自分の地位を黒人に奪われ、アシスタント・コーチになったことにショックをうけている。
彼は混成チームを結束させるために合宿を行う。だが偏見はなかなか消えず、激しい対立が起きる。ある朝、ブーンは南北戦争で多くの若者が命を失った場所までランニングをさせた。そこで彼は選手達に語りかける。その言葉に感銘をうけチームは変わり始めるのだった。
都会育ちの進歩的な転校生。偏見にとらわれない彼の存在もまたチームに影響を与える。偏見を拭い切れない大人達に翻弄されながらもひとつのチームにまとまっていった“タイタンズ”は連戦連勝の快進撃!!
町の人々の心の壁も次第に溶け始め、彼らに拍手と喝采を送るのであった。しかし大事な決勝戦の前夜、誰もが予期しなかった悲劇が起ころうとしていた…。


この作品の脚本を手がけた「グレゴリー・アレン・ハワード」は、ロサンゼルスから故郷のヴァージニアに戻った時にある不思議なことに気がつき、取材を始めることになったそうです。その不思議なこととは、ヴァージニアの片田舎にあるこの町には、大都会ロザンゼルスに比べて、著しく人種差別が少ないということ…。
取材を通して、その理由を住民に尋ねてみると、かえってくる答えは、ほとんど「タイタンズのおかげだよ」というもの。
こうして、ハワードはかつてのタイタンズの人々、町の人々への細かな取材を通して、一本の脚本を作り上げていった。そして、それがハリウッドの名プロデューサー、ジェリー・ブッラカイマーの目に留まり、映画化されたというわけである。

主演のヘッド・コーチ役には、押しも押されぬ名優デンゼル・ワシントン。彼が、生徒たちに南北戦争の戦場で語りかけるシーンは、もっとっも印象に残るシーンである。その言葉が、冒頭にあげたものである。
紆余曲折をへて、根深い偏見と差別の対象となっていた異質な人間同士が、お互いを心の底から理解しあい、一つの目標に向かい協同し、そしてお互いを認め、理解し、一人の人間と一人の人間として向き合い支え合うようになっていく変化の過程がすごく旨く描かれていると思う。
人間の本当の自尊心というものは、その人の本当の努力が基盤になって、徐々に形となっていくものである。が、速見敏彦著の「『自分以外はバカ』の時代!」にもあるように、そうした本当の努力もしないで、他人をコケにしてバカにすることで自分を相手よりも高めることで、似非の自尊心を作り上げ、どうにか生きていこうとする若者が増えているという。
そういう若者たちに、スポーツやその他の活動を通して、困難な中でも努力し、協同する経験を通して、本当の自分らしさをつかみ取ってもらいたい。その活動をどのように指導・支援できるのかということをもっと大事にしていかねばと改めて考えさせられた作品であった。

「総合評価 ★★★★☆ 90点」



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