春の雪
2012年09月16日
恋すてふわが名はまだき立ちにけり
人知れずこそ思ひそめしか
「恋をしている私の名が早くも周りで評判になってしまっている。人に知られないように密かにあの方を思い始めたはずだったのに…」
周りでは、あまり評判が良いとは言えない三島由紀夫原作の小説を「世界の中心で…」で有名な行定勲監督が映像化した「春の雪」を見ました。
綺麗でした。映像も何もかもが…。儚くて、悲しくて…。
三島文学の奥深さ・美しさを上手く映像化した作品に仕上がっていると思います。
「ストーリー」
侯爵家の跡取り松枝清顕と伯爵家の令嬢・綾倉聡子。幼なじみの2人はいつしか思う気持ちを持つようになっていたが、清顕は不器用な性格からか、聡子の気持ちをわかっていながら素っ気ない態度で返すのだった。そんな冬の日、2人は初めて唇を重ねる。しかし、綾倉と宮家の王子との縁談の話が、そのとき進められていた…。
うまく伝わらない乙女の恋心、すれ違う思い、不安定に揺れ動く青年期の心…
そういった複雑な人間の思い…。
瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末にあはむとぞ思ふ
「川の流れがはやいので岩にせき止められる急流が二つに分かれてもやがては一つになるように、今はあなたと別れてしまっても、いつかはきっと逢おうと思うものです」
まさに儚い2人の恋の結末と、また生まれ変ったら…という思いが心にストレートに伝ってきます。時代に翻弄され、愛し合っていても決して結ばれることのない2人の儚い思いがこの詩には表現されているのではないでしょうか。
出家と死という結末で、離れてしまった2人。
最後に舞う二匹の蝶は、二人の転生した姿なのでしょうね。幻想的で、美しい描写です。
三島文学の奥深さを出演者は、本当に上手く表現していたと思います。
特に、清顕の祖母を演じる岸田今日子、清顕と聡子の密会を手助けする綾倉家の侍女蓼科役の大楠道代、そして月修寺門跡役の若尾文子。
この三人のキャスティングは、ある意味ずるいです。思わず「うまい!」と唸らされました。
あまり台詞はありませんが、その存在感こそが、作品にさらに奥行きを与えていると感じました。
公式サイト→(「ここをクリック」してください!)
「総合評価 ★★★★☆ 90点」
「その愛はなぜ禁じられるのか?」(yahooムービーより)
明治維新の功労者を祖先に持つ松枝家の一人息子・松枝清顕(妻夫木聡)は、侯爵である父の意思で貴族の優雅さを身につけるため、幼少の頃、名門華族である綾倉家へと預けられていたことがある。聡子(竹内結子)とはその時からの幼なじみだ。年下の清顕を愛する聡子。そんな聡子を恋い慕う清顕。淡い恋心を抱き将来を約束したふたりは、運命の歯車さえ狂わなければ、きっと祝福され結ばれるカップルとなれたであろう。
清顕の父・松枝侯爵は、士族出身の“成り上がり”。一方、綾倉家は由緒正しき名門だが、いまや没落寸前にまで落ちぶれてしまっている。両家は表面的には友好関係にあるかのように見えたが、実は松枝家に頭があがらなくなってしまった綾倉伯爵は、内心ひそかな復讐心を抱いているのだった。
久しぶりに再会を果たすふたり。心奪われるほど美麗に成長した聡子だったが、ずっと清顕への恋心を胸に秘めていた。そんな聡子の気持ちを知りながら、清顕は自分の本当の気持ちと素直に向き合えず、むしろ聡子の気持ちをもてあそんでしまう。すれ違う気持ちの隙間に、聡子の縁談話が持ち上がる。相手は宮家であり、清顕からの求愛を心待ちにしていた聡子は、綾倉家のために自分の恋愛を犠牲にしなければならなかった。
物語の舞台となる大正初期では、親が条件の良い結婚相手を決めるのが一般的だった。当時の結婚とは現代の自由なそれとは違って、家と家の契約としての意味合いが強かったのだ。特に清顕と聡子が生きる貴族社会においては、婚姻にも様々な制約があった。洞院宮治典王からの求婚は、政略結婚で家名復興を目論む綾倉家にとっては、またとない絶好の機会だった。
聡子と宮家との縁談は、ついに天皇の勅許が下り、大々的に新聞発表もされる。清顕はついに聡子への愛を自覚して、精神的な成熟を遂げるのだが、皮肉にもそれは彼女の結婚が決まってしまった後であった。それでも切実に求愛する清顕。「罰が下ります」とためらう聡子に「どんな罰も受ける」と覚悟を示す清顕。聡子は待ち望んでいた清顕の愛を受け入れる。初めて愛し合う喜びをかみ締めるふたり。しかしそれは決して犯してはならない禁断の密会であり、やがて悲しい結末を迎えるまでの一瞬のきらめきだった。
当時の宮家の婚姻には天皇の許可「勅許」が必要とされ、それは決して取り消すことなど許されないものだった。ふたりの密会は法律違反であり、事実が明るみに出れば、当事者である二人はもちろんのこと、両家の破滅は避けられない。従って、清顕と聡子は命がけの恋を貫いていたのだ。
清顕と聡子が愛し合っている。密かに逢瀬を重ねている……その事実を知った松枝、綾倉両家は騒然とした。彼らはお家を守るため、清顕と聡子を引き離し、別れさせなければならなかった。そして、聡子が姿を消してしまった。清顕は病を患い衰弱しきった身体で、聡子にひと目会うために旅立った。「いま本当に欲しているものがわかった……」と、聡子の愛を手に入れたいと願うのだった。しかしふたりの愛は、清顕の死という決定的な運命によって、やがて悲劇の結末を迎えるのだった。
映画が語るテーマのひとつに「輪廻転生」がある。避暑地の密会で「どんなものに生まれ変わっても、私は必ずあなたを見つけ出します……きっと」と聡子が清顕に誓う。たとえ現世で会うことを許されなくても、いつかきっと一緒になれるというふたりの運命が強く暗示されている。
人知れずこそ思ひそめしか
「恋をしている私の名が早くも周りで評判になってしまっている。人に知られないように密かにあの方を思い始めたはずだったのに…」
周りでは、あまり評判が良いとは言えない三島由紀夫原作の小説を「世界の中心で…」で有名な行定勲監督が映像化した「春の雪」を見ました。
綺麗でした。映像も何もかもが…。儚くて、悲しくて…。
三島文学の奥深さ・美しさを上手く映像化した作品に仕上がっていると思います。
「ストーリー」
侯爵家の跡取り松枝清顕と伯爵家の令嬢・綾倉聡子。幼なじみの2人はいつしか思う気持ちを持つようになっていたが、清顕は不器用な性格からか、聡子の気持ちをわかっていながら素っ気ない態度で返すのだった。そんな冬の日、2人は初めて唇を重ねる。しかし、綾倉と宮家の王子との縁談の話が、そのとき進められていた…。
うまく伝わらない乙女の恋心、すれ違う思い、不安定に揺れ動く青年期の心…
そういった複雑な人間の思い…。
瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末にあはむとぞ思ふ
「川の流れがはやいので岩にせき止められる急流が二つに分かれてもやがては一つになるように、今はあなたと別れてしまっても、いつかはきっと逢おうと思うものです」
まさに儚い2人の恋の結末と、また生まれ変ったら…という思いが心にストレートに伝ってきます。時代に翻弄され、愛し合っていても決して結ばれることのない2人の儚い思いがこの詩には表現されているのではないでしょうか。
出家と死という結末で、離れてしまった2人。
最後に舞う二匹の蝶は、二人の転生した姿なのでしょうね。幻想的で、美しい描写です。
三島文学の奥深さを出演者は、本当に上手く表現していたと思います。
特に、清顕の祖母を演じる岸田今日子、清顕と聡子の密会を手助けする綾倉家の侍女蓼科役の大楠道代、そして月修寺門跡役の若尾文子。
この三人のキャスティングは、ある意味ずるいです。思わず「うまい!」と唸らされました。
あまり台詞はありませんが、その存在感こそが、作品にさらに奥行きを与えていると感じました。
公式サイト→(「ここをクリック」してください!)
「総合評価 ★★★★☆ 90点」
「その愛はなぜ禁じられるのか?」(yahooムービーより)
明治維新の功労者を祖先に持つ松枝家の一人息子・松枝清顕(妻夫木聡)は、侯爵である父の意思で貴族の優雅さを身につけるため、幼少の頃、名門華族である綾倉家へと預けられていたことがある。聡子(竹内結子)とはその時からの幼なじみだ。年下の清顕を愛する聡子。そんな聡子を恋い慕う清顕。淡い恋心を抱き将来を約束したふたりは、運命の歯車さえ狂わなければ、きっと祝福され結ばれるカップルとなれたであろう。
清顕の父・松枝侯爵は、士族出身の“成り上がり”。一方、綾倉家は由緒正しき名門だが、いまや没落寸前にまで落ちぶれてしまっている。両家は表面的には友好関係にあるかのように見えたが、実は松枝家に頭があがらなくなってしまった綾倉伯爵は、内心ひそかな復讐心を抱いているのだった。
久しぶりに再会を果たすふたり。心奪われるほど美麗に成長した聡子だったが、ずっと清顕への恋心を胸に秘めていた。そんな聡子の気持ちを知りながら、清顕は自分の本当の気持ちと素直に向き合えず、むしろ聡子の気持ちをもてあそんでしまう。すれ違う気持ちの隙間に、聡子の縁談話が持ち上がる。相手は宮家であり、清顕からの求愛を心待ちにしていた聡子は、綾倉家のために自分の恋愛を犠牲にしなければならなかった。
物語の舞台となる大正初期では、親が条件の良い結婚相手を決めるのが一般的だった。当時の結婚とは現代の自由なそれとは違って、家と家の契約としての意味合いが強かったのだ。特に清顕と聡子が生きる貴族社会においては、婚姻にも様々な制約があった。洞院宮治典王からの求婚は、政略結婚で家名復興を目論む綾倉家にとっては、またとない絶好の機会だった。
聡子と宮家との縁談は、ついに天皇の勅許が下り、大々的に新聞発表もされる。清顕はついに聡子への愛を自覚して、精神的な成熟を遂げるのだが、皮肉にもそれは彼女の結婚が決まってしまった後であった。それでも切実に求愛する清顕。「罰が下ります」とためらう聡子に「どんな罰も受ける」と覚悟を示す清顕。聡子は待ち望んでいた清顕の愛を受け入れる。初めて愛し合う喜びをかみ締めるふたり。しかしそれは決して犯してはならない禁断の密会であり、やがて悲しい結末を迎えるまでの一瞬のきらめきだった。
当時の宮家の婚姻には天皇の許可「勅許」が必要とされ、それは決して取り消すことなど許されないものだった。ふたりの密会は法律違反であり、事実が明るみに出れば、当事者である二人はもちろんのこと、両家の破滅は避けられない。従って、清顕と聡子は命がけの恋を貫いていたのだ。
清顕と聡子が愛し合っている。密かに逢瀬を重ねている……その事実を知った松枝、綾倉両家は騒然とした。彼らはお家を守るため、清顕と聡子を引き離し、別れさせなければならなかった。そして、聡子が姿を消してしまった。清顕は病を患い衰弱しきった身体で、聡子にひと目会うために旅立った。「いま本当に欲しているものがわかった……」と、聡子の愛を手に入れたいと願うのだった。しかしふたりの愛は、清顕の死という決定的な運命によって、やがて悲劇の結末を迎えるのだった。
映画が語るテーマのひとつに「輪廻転生」がある。避暑地の密会で「どんなものに生まれ変わっても、私は必ずあなたを見つけ出します……きっと」と聡子が清顕に誓う。たとえ現世で会うことを許されなくても、いつかきっと一緒になれるというふたりの運命が強く暗示されている。
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Posted by no-bu at 22:19│Comments(0)
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