ヒューゴの不思議な発明

2012年09月18日

 第84回アカデミー賞、最多の11部門にノミネートされ、撮影賞、美術賞、音響編集賞、録音賞、視覚効果賞の5冠を獲得した『ヒューゴの不思議な発明』を鑑賞。

 本作は、ブライアン・セルズニックの小説「ユゴーの不思議な発明」をもとに、あのマーティン・スコセッシが監督した作品。

 
マーティン・スコセッシ作品には、“リアルな暴力描写”が多いが、本作に関しては、ジェームズ・キャメロンが試写会後の会見において、本作を「ようやくできた子供たちを連れて行けるスコセッシ映画」と評しているように、その対象の幅を大人だけでなく子どもまで広げ意識した作品となっている。(私個人的には、小学校高学年以上の子どもでなくては、ちょっと?という感じはするが…)

「ヒューゴの不思議な発明」
原題:Hugo
監督:マーティン・スコセッシ
原作:ブライアン・セルズニック

ヒューゴの不思議な発明


まず本作は、映画をこよなく愛すスコセッシのジョルジェ・メリエスへの尊敬と敬意を現すものとなっている。
ご存じのように、メリエスとは、映画史上最初の本格的SF映画といわれる「月世界旅行」(1902年)を制作した人物である。

 最初の頃に日本でも映画を“活動写真”と呼んでいたように、創世記における映画は、単に動くものを記録するだけというごく単純なものであった。
しかし、SFXの創始者とも賞されるメリエスは、様々な技術の開発~多重露光やディゾルブ、ストップモーションの原始的なもの~し、世界初の職業映画監督とも呼ばれている。
こうしたSFXの創始者たるメリエスへのオマージュとしても、スコセッシは、本作で彼自身初めて3D技術を用いており、その事に関しても、ジェームズ・キャメロンが「今まで見た中で間違いなく最高の3D映像」、「それは(スコセッシ自身の)美術的表現に常に効果的に使われていて、決して邪魔になっていない」と最高の賞賛を与えている。
ヒューゴの不思議な発明

  メリエスに話を戻そう。
ネットで調べてみると、彼は「もともとマジシャンで劇場経営者であったが、1895年に、同じくフランスのリュミエール兄弟による映画の公開を見て映画製作に乗り出した」ようである。
「彼の最も有名な作品は、1902年の映画『月世界旅行』で」、「1本の映画の中で複数のシーンがあり物語が存在するという、当時としては画期的なものであった。」ちなみに、本作でも、この月世界旅行の1シーンがイラストで登場する。
上でも述べたように、当時単に動くものを記録するだけのものだった映画の世界に、メリエスは、自身が元マジシャンであったことを活かし、その手法を駆使し、さまざまなトリック撮影を組み入れ、この「月世界旅行」を制作・公開したちまち人気者となった。
実際に、ご覧になられても分かるように、この「月世界旅行」は、わずか16分の短編であるが、ここには現在に至るまでの映画の魅力がたくさん詰め込まれている。


現在、映画界にその名を轟かせているスピルバーグやジョージ・ルーカス、ジェームス・キャメロンらの作品の多くが、このメリエスの「月世界旅行」をその元祖としている。

 このように、映画史におけるこのような素晴らしい業績にもかかわらず、メリエスの晩年はかなり寂しいものであった。
本作にもあるように、彼は、いつしか映画界から忘れられ、パリのモンパルナス駅で細々とおもちゃ屋を営んでいたという。
本作は、この時期に彼をその後の作品づくりへとインスパイアすることとなった少年との出会いを描いている。

 あらすじにも触れることになるので、端折るが、色々と評価は分かれるようであるが、個人的には、最後の場面で心を閉ざしていたメリエスが、ヒューゴのおかげでもう一度表舞台に立つ事となるのは、非常に感動的であった。
そういう面でも、個人的には、子ども心を思い出しつつ大人が見て楽しむ作品だと感じる。
あの頃を思い出しながら、鑑賞などいかがだろうか?

「総合評価 ★★★★☆90点」



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Posted by no-bu at 11:50│Comments(0)映画
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